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【映画】『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』【ネタバレ注意】

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冬に向け、一段と冷え込みが増した11月下旬。横浜・みなとみらいにある小劇場「キノシネマ横浜みなとみらい」で『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』を見てきた。

あらすじ

1942年、ナチスドイツ占領下のフランス。ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人の主人公・ジルは、処刑される寸前で自分をペルシャ人だと偽り、処刑を免れ収容所へ連れていかれる。そこでジルは、終戦テヘランでレストランを開きたいというコッホ大尉に、ペルシャ語を教えるように命じられる。ジルは架空のペルシャ語の単語を造り出し、それを教えることでなんとか命をつなぎとめていく。その中で、ジルとコッホ大尉の間に奇妙な関係が生まれていく・・・。

感想

収容所での労働(炊事作業)の合間に単語を作り、業務後大尉に偽のペルシャ語を教える。嘘がばれたら即処刑されるという極限状態の収容所生活には、見ているこちらにも緊張感が伝わってきてはらはらさせられた。

特に印象に残ったのはコッホ大尉の言動だ。彼は終始認識が周りとズレていた。周囲の部下達はジルの嘘を全く信じていなかったが、大尉だけはジルをペルシャ人であると信じていた。またある「事件」によって大尉が激昂しジルを半殺しの目に遭わせたにも関わらず、その後はますますジルへの信頼とも友情ともとれる態度を取った。大尉はジルを最後まで「ペルシャ語を教えてくれる良き友人」として見ており、その認識のズレが滑稽にも、あるいは狂気にも映った。

大尉以外のナチスドイツ軍の兵士達の平時の人間味のある姿とユダヤ人に対する冷酷な姿の二面性にも恐怖心を抱いた。冒頭のユダヤ人を虐殺した帰りに女性兵士をデートに誘う、仕事を外された腹いせに無関係の収容者を虐待する、といったシーンは、ナチスによるホロコーストの恐ろしさ、戦時下の異常さを克明に表していた。

あとがき

近年、第二次大戦下のホロコーストをテーマにした映画が増えているという、ホロコーストを経験した人々も高齢化が進み、当時の惨劇を伝えられる人が少なくなっている中で、「記憶のデジタル化」が進んだ結果だという。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や中国と台湾との軍事的緊張の高まりといった新たな世界大戦の火種がくすぶっており、日本も他人事では無いという言説が目立つようになった。日本は同じ轍を踏んで欲しくないな、と冷え込んだ夜空にイルミネーションの木々が並ぶみなとみらいでそう思った。